Column - 2025.12.01

「山本理顕 コミュニティと建築」

Arch+Expo-01

先日、横須賀美術館で行われている「山本理顕 コミュニティと建築」をみた。自身の設計した美術館での自身の展覧会ができることはなんとも羨ましい。

美術館としては、2006年7月の完成直後見学に行った。ガラスの箱の中に展示ボックスが入れ子状に入る構成で、通常の建物では天井の中で見えない部分(展示ボックスの上にある設備機器やガラスの屋根を支える鉄骨部材)が露出している。これほどの規模でボックスインボックスという明快な空間構成が、純粋に表現されていることに当時驚いた。モダニズムの透明性、表現主義、コンセプチャルな建物であるという印象であった。19年経って改めて建物を見てみるとガラスは曇っていてその透明性は少し失われ、モダニズムの理念の表現も古さを感じざるを得なかった。白い鉄骨も部分的に腐食し、透明、抽象的な建物の限界だろう。

展覧会では、初期住宅から最新作までナンバリング(No.01〜No.197)され、図面と作品説明の大きなポスター、その前にオリジナルアルミ展示台の上に模型作品という統一形式で展示されている。その他実現に至らなかったプロポーザル提出図面も壁面にずらりと展示されているところが特徴的で、建築家の作品説明のコメントからも、認められなかった作品への想い、粘り強く諦めない、戦う建築家の姿が窺える。自らの閾論や社会の問題を建築家として正面から捉える山本理顕氏らしい。私が、若かりし学生の頃、2次会の席で(おそらくちいさな誤解から)怒られた思い出があるが、山本氏自身の作品に対する揺るぎのない信念の現れだったのだと今になって思う。

原広司研究室出身らしく、集落サーベイの経験から、玄関を入ってもまだ「そと」の住宅、テラスをそのままビンクルームにし、個室をバラバラに配したNo.2山川山荘、個室で囲まれた屋根のない「そと」が主題かつ、閾論を形にしたというNo.30岡山の家、上野千鶴子氏との対談・調査で有名な保田窪団地など、家族と社会、コミュニティを真正面から建築理論と空間で探究した山本理顕氏の作品の積み重ねと展開が、ナンバリングされた展示方式しかり、その意図がよくわかる。安藤忠雄氏の住吉の長屋と同じく、「そと」の住宅は、冬には厳しい生活が予想される。モダニズムの理念がすまう人を納得させているように今では見える。

コミュニティとの関わりを考えた横浜国立大学大学院でのNo.127地域社会圏モデルは、500人が集まってすまう小さな単位を想定している。人数をグループ化して、施設と空間をシェアするのに適切な設備やエネルギー設備の分配と配分が中心で、建築の空間性が乏しいのが残念であった。

近作ではグリッドを追い続けた建築家の到達点としてNo.186名古屋造形大学が、圧倒的で、素晴らしい。建築家仲間と大阪万博の大屋根リングの木造グリッドとの対比は面白いと話をしていたが、名古屋造形大学は実物を見ておらず、ぜひ作品を見にいきたいと思った。

個人的には、No.67邑楽町役場庁舎、No.155天草市本庁舎など、残念ながら中断され完成を見ていないプロジェクトに惹かれた。いずれも地域住民や小店主との対話により、コミュニティと建築の新たな展開を予感させるものであった。山本理顕氏の将来への再挑戦への決意が感じられ、この展示会における「建築家の作意の内」か、と考えさせられた。        
                                        (2025年10月)

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