戦争に抗する・岡野八代(岩波現代文庫)
久しぶりの感動の書・バイブル!
私の関心ある「建築」・「防災」・「まちづくり」・「ケア」を考えるうえで、その基礎となるような、社会学・政治学の叡知を学んだ。そこから最も心に残った部分を抜粋すると。
憲法学者笹沼弘志を引用しつつ岡野は
笹沼が論じるように「人権とは国家の目的であり、存在根拠である。国家は手段なのだ」という、近代主権国家が登場した後、人類がようやくたどり着いた叡知である。・・・(これを)権力に対する抵抗原理としてとらえ、フェミニズム理論から、ジェンダーフリー・バッシングと憲法破壊を目指す論議をとらえなおし、そうした論議に対抗するためには、「自律的な個人であることを前提としてきた政治理論や法理論を、「主体」といった根本概念から見直し、私たちがさまざまな世代を通じて育まれ、ケアされ・ケアしつつ他者に取り囲まれて生を送っているといった具体的な諸個人を前提に、近代立憲主義の叡知を練り直す必要性がある」(p174,175から)
と第6章の終わりでまとめている。この部分からは、「平和」の構想を掲げ戦う岡野先生の生きざまがうかがえる。私はそこから、「建築」などを考えるうえで「ケアの倫理」の存在価値があること、具体的には「憲法」を中心にすえた「主体」の見直しとなる制度や人とのつながりを空間や形にしていく事ができればと考えた。

本書は、岡野先生の一貫したこれまでの研究と活動の歩みがまとめられており、国内外の思想、現代政治の論点などの整理ができ、学びが多かった。これを生かして、今必要とされる「戦争」と「平和」について考えるヒントにもなった。
Webインタビューさせていただいたときに海外の最新書と思想の引用からの説明が素晴らしく、ジェンダー視点から現代の問題を見ることの奥深さを学ばせていただいた。また、別日には対面でお会いでき、その際の思慮深い声を思い出しながら、本書を読むことができたことは幸運な体験であった。